教育長のひとこと NO.17

平成28年1月31日

2016年 附属学校教育局教育長挨拶

 今年もどうぞよろしくお願いします。                                                                      筑波大学附属学校群(11校)では、子どもたちが、それぞれの思いで学校生活を送っています。各種競技やコンテストでも活躍しています。一方子どもの人権を守り学校生活を支援するには、学校教育で改善すべきところがあることもわかり、身を引き締めております。またたゆまず教育実験を続ける附属学校群では、先導的教育拠点、教師教育拠点、国際教育拠点として成果をあげています。600名を超す教職員のみなさんに心から感謝します。そして保護者、PTA、同窓会のみなさまに深謝します。

<2015年を振り返る>

 さて昨年の教育研究活動を、インクルーシブ教育、グローバル教育、そして附属学校教育局・附属学校群の運営・経営および将来構想検討に焦点をあてて、振り返ってみます。昨年、11校すべてが、多様で豊かな教育研究成果をあげましたが、ここでは附属学校群全体で取り組んだものを紹介します。

インクルーシブ教育

 4月年度初め、文部科学省の「インクルーシブ教育システムモデル構築事業(スクールクラスター)」が採択されました。申請書の作成にあっては多数の先生方の力を発揮していただきました。附属学校教育局ではこの事業を活用して、従来の特別支援教育の専門家が普通学校の発達障害等のある子ども支援するという「支援モデル」を超えて、教科教育・特別活動・特別支援教育の知見を統合させながら、障害のある子どもも障害のない子どもも、互いの人権を尊重し、共に生きる「多様性理解・相互支援モデル」(筑波型のインクルーシブ教育)の推進をめざす、新しい教育実験のプロジェクトです。

その一環として、暑い7月28日~30日、9歳から18歳の53名の附属学校の生徒(附属中学校、附属高校、駒場高校、坂戸高等学校、聴覚特別支援学校、大塚特別支援学校、桐が丘特別支援学校)が長野県で「黒姫高原共同生活」を体験しました。生徒による実行委員会と教職員による運営委員会が相補的に機能し、共同生活を準備し支えました。生徒の実行委員会のみなさんと引率34名の教職員に感謝します。

師走12月12日には、「共生社会を目指す講演とシンポジウム」を行いました。そこで山海嘉之教授の講演「これからの共生社会を生きる筑波附属の子どもたちに伝えたいこと」があり、「共に支え合う社会をめざし、テクノロジーを開発している」というお話を聞きました。山海教授のお話は、いつも、力強く、児童生徒や教職員の心を揺さぶるものです。続いて、附属学校の生徒4人(附属中学校、聴覚特別支援学校、坂戸高校、視覚特別支援学校)が黒姫共同生活の体験や異文化交流、障害理解について、自分の言葉で発表しました。まさに多様な体験談の交流でした。さらに今年2月9日には、「インクルーシブ研究実践教育協議会」を行います。

 忘れてならないのは、昨年2月28日筑波大学附属学校教育局主催「公開教員研修会」における、書家・金澤祥子さんのお母様である金澤泰子さんの講演です。金澤祥子さんは、附属久里浜特別支援学校で子どもたちに書を指導して下さいました。そして贈って下さった書は「共に生きる」です。研修委員会のみなさんには、いつも魅力的な講師を調整していただき感謝しています。

グローバル教育

 まだ寒い2月14日、15日、筑波大学はスーパーグローバル大学キックオフシンポジウムを行いました。15日の分科会で、「スーパーグローバル大学への期待:高大連携の視点から」に附属学校の高校生が参加しました。司会2名(附属高校、附属駒場高校)、シンポジスト5名(附属高校、附属駒場高校、附属坂戸高校、土浦一高、茗渓学園)、そして筑波大学のG30(グローバル30:英語で学位が取れるプログラム)の留学生2名を交えて討論しました。使用言語は英語で、司会進行から運営補助まで附属学校の高校生で行われました。スペシャルゲストの永田恭介学長のご挨拶もあり、G30の留学生の的を射た質問もあり、会場が盛り上がりました。教育関係者100名以上で会場がうまり、筑波大学経営協議会委員の吉田和正様や海外の大学教授らから、高校生の発表を高く評価してくださいました。高大連携のグローバル教育の、一つのシーンです。

そして残暑の残る9月28日~30日、筑波大学主催つくばグローバルサイエンスウイーク(TGSW:Tsukuba Global Science Week)が開催されました。29日、筑波大学体育学群長真田久先生企画の「オリンピック・パラリンピックムーブメントへの参画」のセッションで、附属学校の高校生3名(附属坂戸高校、附属桐が丘特別支援学校、附属視覚特別支援学校)が土浦一高、茗渓学園、ブラジルの高校生と、オリンピック・パラリンピックについて、英語で発表しました。さらに30日のTGSWの最後に示された「筑波宣言」に一つの条項(「平等の推進者として」”supporters of equality”)を作成しました。筑波宣言作成をリードしてくださった、池田潤学長補佐室長、キャロライン・ファーン・ベントン副学長に感謝します。グローバル教育とインクルーシブ教育の両輪の価値をもつ、オリンピック・パラリンピックムーブメントに貢献した附属学校群の生徒たちを誇りに思います。そして高大連携に関しましては、大学・附属学校連携委員会のお骨折りのおかげです。

 さらに、8月28日オリンピック・パラリンピック教育研修会を行い、本学の真田久先生とオリンピックメダリスト山口香先生、附属視覚特別支援学校卒業生のパラリンピックメダリスト河合純一氏、附属小・中・高卒業生のグローバルマナー教育の江上いずみ先生のお話のおかげで、オリンピック・パラリンピックが身近になりました。また11月28日障害者スポーツプロジェクト「体験型スポーツイベント」では附属小学校と附属視覚特別支援学校の子どもの協力を得ました。オリンピック・パラリンピックの事業は、オリンピック教育委員会のみなさんのお世話によるものです。

附属学校教育局・附属学校群の運営・経営および将来構想検討

 

 附属学校教育局を中心とする附属学校群の運営・経営について少しふれます。今年度もSSH、SGH、特別支援教育関連で17件事業(約9千万円)が採択されました。また真田久教授が中心となりCORE(筑波大学体育系と附属教育局の共同でオリンピック教育を推進する組織)でオリンピック・パラリンピックムーブメント促進事業(約1億5百万円)も採択されました。

そして自己収入の確保について附属学校からアンケートをとり、できるところから実行して収入を増やすことができました。さらに附属聴覚特別支援学校の補聴機器メーカーとの共同研究なども進んでおります。そして附属学校教育局の教員が中心になって科学研究補助金基盤(B)を2本(グローバル教育、インクルーシブ教育)申請しました。また、附属学校教育局指導部門と特別支援教育研究センタースタッフの合同会議についても今後大いに成果を期待したいと思います。

4月から7月にかけて、文京地区キャンパス将来構想案を検討しました。2015年4月20日(月)附属小・中・高等学校教職員と教育長の対話は附属学校の歴史上初めての試みだったと聞きました。みなさまのご協力に感謝します。筑波大学および附属学校群の現状と将来について共有するよい機会になりました。7月に作成した案は大学に報告しましたが、大きな財源の必要性が確認され、実現は先になります。第3期中期目標・中期計画期間、学校種・キャンパスを超えた再編を通して附属学校群の教育研究(インクルーシブ教育・グローバル教育など)を発展させるとともに、経営面での最大の努力をしていきます。

そして10月、平成25年10月から進めてきた「附属学校将来構想検討委員会」の報告をまとめました。この報告をもとに第3期のアクションプランを検討しております。委員会に参加された先生方にあらためてお礼申し上げます。この検討委員会を通して、筑波大学附属学校群の強みと意義を確認しました。附属学校群の強みは、総合大学である筑波大学の附属学校であること、そして歴史と教育的特徴のある11校の学校群であることです。そして附属学校群の意義は、社会のニーズに応じて教育実験を行いそのエビデンスに基づき教育施策の提案・教育実践を提言することです。国立大学法人の附属学校の教育研究の成果は、公立学校や私立学校にも活用されるものです。附属学校群の研究成果の「見える化」と「使える化」を進めなくてはなりません。全国から多くの教員が参加する附属学校の教育研究会や教員免許状更新講習「附属学校教育実践演習」の機会などを通して研究成果の発信を続けていきたいと思います。筑波大学の教員免許状更新講習は高い評価を得ており、附属学校の先生方に感謝します。

 

<2016年:未来に目を向ける>

「第3期中期目標・中期計画」の最初の1年であり、きわめて大きな出発の1年であり、新しい6年間(平成28年度から33年度)の始まりです。これまでの3拠点構想(先導的教育拠点、教師教育拠点、国際教育拠点)の取り組みを基盤として、附属学校将来構想検討委員会の議論を活かして作成した第3期中期目標中期計画の実践を始めます。

 

これまでの、附属学校群のスローガンを少し修正したものを紹介します。あらためて、胸にきざみたいと思います。できれば職員室に掲示していただけると幸いです。

  1. 子どもの人権を守り、最良の教育を提供する
  2. 教職員が互いを尊敬し、働きがいを感じる職場を作る
  3. 筑波大学の一員として、教育と研究に貢献し、経営の努力を行う

 

永田学長就任の際の所信表明として、筑波大学のミッションは、「地球規模課題の

問題解決と未来地球の創造に向けた知の創出」と「(それを)牽引するグローバル

人材の育成」です。これからもグローバル時代に求められる人材育成を、附属学校

群と大学の密接な連携・協働で進めたいと思います。

 

とくに、今年度中に行うことは以下の2点です。

  1. 第2期中期目標・中期計画の6年における教育(実験)成果の総括できれば具体的な指標も入れたいと思います。指標は、コミュニケーションと自己主張の道具です。そして附属学校群の歴史のなかで蓄積した遺産を、資産として活用する方向性を示したいと思います。
  2. 第3期中期目標・中期計画の具体的施策の確定昨年10月にまとめた「附属学校将来構想検討委員会報告書」で示した、将来にむけたアクションプランを盛り込み、第3期中期目標・中期計画の具体的施策と6年間の年度別計画を確定します。

 

筑波大学附属学校群のミッションは、「21世紀の子どもと学校のリソースとニーズに応じる」時代を先取りした教育の開発・実践・提案です。そして「グローバル人材を育てる教育のカリキュラムの開発」と「インクルーシブ教育システムの構築」が、附属学校群で研究する新しい教育の日本の柱です。その柱をつなぐのが「ダイバーシティ・共生」だと思います。もちろん、新しい教育を推進する教師を育てるプログラムの開発と提案が求められます。附属学校群は、教師教育拠点として、このチャレンジも引き受けます。

では、このミッションをどのように進めるかです。具体的には以下の6点です。

 

  1. 経営の積極的な改革:キャンパス再編、人事の見直し、自己収入増などを行う。
  2. 附属学校群としてのさらなる共同:4400名の子どもと600名を超える教職員のコミュニティの多様性を活かす。学校間のボーダーを超えて、研修のための人事交流、兼担などを行う。
  3. 筑波大学との共同研究:実験(研究)のプロである大学教員と実践のプロである附属の教員が共同で研究し、成果を発表する
  4. 他の大学・附属学校との共同プログラム:他大学・附属学校と、互いの強みを活かし、足りないところを補う方向で、社会のニーズに応じる新しい教育プログラムを開発する。これは、経営面での共同にもつながる。
  5. 児童生徒の参加:附属学校群の財産は子どもである。多様な経験をもち豊かな発想力をもつ児童生徒の参加により、教職員・児童生徒共同で、学校づくり、教育開発を進める。
  6. 卒業生・PTAによる支援:附属学校群のもう一つの財産である、卒業生やPTAの知恵・人脈・具体的な支援もかりながら、社会(産業界、行政、政治など)にむけて、筑波大学附属学校群の成果と意義を発信する。

 

これらの鍵は、「開く、つながる、伝える」ではないでしょうか。筑波大学および附属学校群の発展、みなさまのご多幸を祈りまして、2016年の挨拶とさせていただきます。