教育長のひとこと NO.6

7月上旬、九州地方が豪雨災害に襲われました。「教育長のひとこと」に先立ち、被害に遭われた方々にお見舞い申し上げますとともに、一刻も早い回復をお祈りいたします。

7月は、学校が夏休みになる時期です。いろいろな活動が待つ夏休みに向け、子どもたちだけでなく学校の先生たちも、それぞれの立場で忙しい日々を送っています。

今回は、みなさまにご報告させていただきたいことがあります。「平成29年度新時代の教育のための国際協働プログラム(教員交流)」という事業の公募が文部科学省からありました。この事業は、平成28年5月に開催されましたG7倉敷教育大臣会合で採択された「倉敷宣言」を踏まえ、初等中等教育の先生方をG7各国に派遣し教育実践活動に関する交流を行うものです。

附属学校教育局は、お茶の水女子大学と共同でこの公募に応募し、幸いにも採択されました。これにより、今年度、筑波大学とお茶の水女子大学の附属学校の先生方をハワイ大学及びその附属学校に2週間、派遣することとなりました。ハワイ大学では、従来の理系教育に社会科学などを加えた文理融合型の新しい理系教育を開発中です(STEMS2と呼ばれています)、そのことを中心に筑波大学・お茶の水女子大学・ハワイ大学の3大学の附属学校の先生方が意見交換をする予定となっています。いろいろな事情のため、ハワイに行くのは来年の2月から3月にかけてとなります。みなさまにそのご報告ができるのは、年度が明けてからになるかもしれません。この交流活動が附属学校における新しい教育の1つのきっかけになればよいと願っています。

ところで、前回、親子の関わりについて少し触れさせていただきました。子どもたちは、何もしなくても、何も物をもらえなくても、親御さんと一緒にいるだけでうれしい、安心するものです。『そんなことはない、中学生になるうちの息子(娘)は、親がいない方が喜ぶ』と思われる方もおられるかもしれません。それは、小さいときに親御さんと一緒にいるうれしさやホッとする感じを十分に体験しているから、親御さんが見えなくても(いなくても)平気でいられるようになっていることに他なりません。このように、一緒にいるだけで心が安らぐ親子の関係は、愛着(attachment)と呼ばれます。最近は、英語のままアタッチメントと言われることも多くなっています。

自然界において、ほ乳類の赤ちゃんの食べ物は母親からの乳汁だけです。このことは、長時間、母親から離れることは、ほ乳類の赤ちゃんにとって大変危険な状態を生じることを意味します。そのため、ほ乳類の赤ちゃんには、母親から物理的に離されないようにする、あるいは、母親に密着しようとする特徴が備わっています。母親に常にくっついていることで、ほ乳類の赤ちゃんは、空腹が満たされ、体温も保たれ、危険からも守られることになります。愛着形成は、物理的な親子の密着で始まり、身体的安全を保つために不可欠のものですが、身体的満足感が得られる状況の繰り返しは、安心感、心の安定につながっていきます。こうして、親が子どもの心の安全基地となることで、子どもは、成長とともに外の世界に向かっていけるようになると言えるでしょう。思春期の子どもたちが、親御さんから離れて平気になのは、健全に愛着形成が行われている証なのです。

前回、子育てにおける親の勘違いの話をしましたが、愛着形成のために最も大切なことは、接着や付着というattachmentの英語のもとの意味通り、子どもと一緒にいること、くっついてあげることのように感じています。3、4歳までの子どもは、基本的に物をあまり欲しがりません。たとえ、欲しがったとしても、親御さんがいつもそばにいる状態で育ってきた子どもであれば、がまんすることができます。なぜならば、子どもが一番欲しいもの(親御さんと一緒にいること)が満たされているからです。

これから迎える夏休み、遊園地ではなく、自然の中で親子の時間を過ごしていただければと思う次第です。