教育長のひとこと NO.9

紅葉前線が、北から南下してきています。山からは雪の便りが聞かれるようになってきました。関東では、長雨と12月並みの気温という例年にない気候が見られています。それでも、附属学校群では、運動会・体育祭や文化祭が毎週末のように行われ、子どもたちが元気な姿を見せてくれています。

筑波大学では、「つくばグローバルサイエンスウィーク」(Tsukuba Global Science Week ;TGSW)という企画を行っています。TGSWは、『様々なレベルの社会の要請に対して、多岐にわたる学術分野の最先端の研究成果を共有し、より良い未来を実現するために何ができるかを議論する場』として、筑波大学が開催している会議です。国内外の研究者や学生が集まり、多彩なテーマで情報や意見の交換をしています。

(http://www.kokuren.tsukuba.ac.jp/TGSW2017/j/index_j.html)

今年のTGSW2017は、9月25~27日の日程でつくば国際会議場を開催されました。そして、最終日の9月27日、「科学の芽から研究者へ;科学の芽賞受賞者の研究と今」と題して、「科学の芽」賞受賞者で、現在、大学生や大学院生になっている人たち5名による発表が行われました。「科学の芽」賞は、小学生・中学生・高校生を対象に自然や科学への関心と芽を育てることを目的としたコンクールで、平成18年(2008年)から毎年行っているものです。5名のどの人も、「これは何だろう?」、「どうしてだろう?」と感じたところから、自分たちの研究が始まり、「科学の芽」賞につながったことを話していました。みなさん、「科学の芽」賞を受賞したことで、自分がやっていることは大丈夫なんだという自信を得たとも話されていました。

子どもたちは好奇心の塊です。彼ら彼女らにとって、年齢が小さいほど、見るもの、聞くもの、すべてが「何だろう?」と感じるものになります。子どもたちは、じっと見つめるだけでは足りず、自分の興味を引いたものに触れたり、いじったり、あるいは、それを集めたりすることも少なくありません。私がこれまで出会った子どもたちの中に、イモムシが大好きな小学生の男の子がいました。春から夏にかけて、彼は、ポケットいっぱいにイモムシを捕ってきては、お母さんに見せ、家にある虫かごや空き箱の中に葉っぱを入れて飼っていました。残念ながら、お母さんは、イモムシに対してそれほど好意的な印象を持っておられませんでした(お母さんのお話では、『鳥肌が立つ』とのことでした)。でも、お母さんは、『そぉ』と言って、息子さんの好きにさせていました。実は、このお母さん、息子さんが学校に行っている間に、ときどき、決死の覚悟でイムモシが乗っている葉っぱをそっと持ち上げて袋に入れ、家から離れた原っぱにこっそり捨てていたとのことでした。お母さんのこの努力で、家の中のイモムシの数は一定に保たれていたのかもしれません。このお子さんは、今はもう大人になっている年齢です。どんな大人になっていることでしょう。

子どもの頃の好奇心、何だろうと思う気持ちを大切にされて育った子どもは、いろいろなことに興味を持ち挑戦する心が成長しても残っているように感じます。自分が興味を持つ対象や持つこと自体を否定されない体験は、子どもにとっては自分自身が受け入れられているのと同じ思いにつながり、そうした思いを持ち続けられる子どもは何事に対しても安心して(臆病になることなく)取り組むことができるようになるからです。

これなんだろう?、どうしてこうなるの?、という不思議に感じる心こそ『科学の芽』が芽生える種になるのだろうと思います。『科学の芽』は、理系的なことだけを意味しません。私たちは、そうした子どもの気持ちを大事にしていきたいと思います。