教育長のひとこと NO.10

朝晩は、暖房が欲しい気候となってきました。関東地方の平地でも紅葉が楽しめる時期となってきています。9月から始まった附属学校各校の運動会・体育祭と文化祭も今月で終盤を迎えます。各学校での行事の様子は、それぞれの学校のウェブサイトをご覧いただければと思います。

 

附属大塚特別支援学校では、幼稚部の園庭と遊戯室を「にこにこひろば」と称して開放しています。社会貢献活動の一環ともいえるでしょう。その活動の一つに子育て支援講座があります。先日、この子育て支援講座で、お話しする機会をいただきました。参加された方々は、大塚特別支援学校の子どもたちの保護者の方々が中心でした。幼稚部の企画でしたので、子どもの心の発達についてお話しさせていただきました。せっかくですので、お話しさせていただいた内容を、何回かに分けてご紹介させていただこうと思います。

 

乳幼児期の子どもの脳は、さまざまな経験を通して多くのことを学習しその働きを高めていきます。これを、発達と呼びます。因みに、発達とは働き(機能)が向上することを、成長とは身体のサイズが大きくなることをいいます。そして、こうした脳の働きの進みとともに、人としての心が発達していきます。

1歳までの赤ちゃんの時期も、心は発達します。赤ちゃんは、お腹が空いたりおむつがぬれて不快なときに泣くと、母乳やミルクを飲ませてもらえたり、おむつを取り換えてもらえたりする体験を繰り返しています。あるいは、抱っこされて温かさを感じることもあるでしょう。でも、赤ちゃんの視力は決してよくありません。生後6か月くらいまでは、濃い霧の中にいるようにまわりはぼんやりと見えているだけです。毎日、世話をしてもらえるお母さんのことも、おぼろげなものが何かそこにあるとしか感じられていないと言われています。このような状況のため、生まれて半年ほどは、赤ちゃんは、お母さんを自分とは別のものと意識することができず、お母さんと自分の区別ができない一体感を感じていると考えられています。空腹などの不快な状態がその都度取り除かれたり心地よい温かさに包まれたりする体験とこの一体感のもと、赤ちゃんは、不安感や恐怖感あるいは警戒感を感じることなく、安心した情緒状態で過ごすようになり、誰に対してということではなく、いわば世界全体に対して絶対的な信頼感を持つようになっていくと説明されています。

生後6か月以降になりますと、運動機能が発達し、寝返り・うつ伏せ、お座り、這い這い、立つということが可能になります。うつ伏せ、お座り、立位という姿勢の変化は、赤ちゃんの視野を広げることになります。這い這いで移動することで、あちこちを探検できるようになります。こうした運動発達により、赤ちゃんが感じられる世界は大きくなっていくのです。また、移動できるということは、お母さんから離れることができるということでもあり、視力の発達もあることから、お母さんを自分とは別の存在として認識するようになっていきます。なお、この時期は、お母さんと離れている状況を意識すると、赤ちゃんは不安を感じてしまい、お母さんに近寄っていきます。そして、お母さんと触れあうことで不安が解消されると、また探検に出かけ、また不安を感じると戻ってくると言うことが繰り返されます。このことを情緒的エネルギー補充現象と呼びます。たとえて言いますと、心のエネルギータンクがまだ小さく、お母さんからしばらく離れているとそのタンクが空になり、お母さんに近づくことでタンクに心のエネルギーがまた溜まり、そのエネルギーがある間はまたお母さんから離れられるようになる、というような感じです。

赤ちゃんの時期は、このようにして、周囲に対する信頼感が養われ、その後の心の土台ができる時期とも言えるでしょう。このため、赤ちゃんの時期のもっとも大事な発達課題は、自分がプラスもマイナスも含めて絶対的に受け入れられていると感じられる体験(絶対的信頼感)であるとも言われているのです。なお、発達課題とは、その年代にそのことを適切に体験することが、心の発達にとって大切と言われている事柄をいいます。

スペースの都合で、今回は乳児期の心の発達を取り上げてご紹介しました。