プロジェクト研究

附属学校教育局では大学の教育・研究組織と附属学校群との連携に関する企画や調整を行うため、大学・附属学校連携委員会を設置している。同委員会の下、附属学校の教育及び研究の充実に資する各活動を行っており、 その一つとして、プロジェクト研究を実施している。

2020年度の各プロジェクト


プロジェクト研究1『交流及び共同学習に関する研究』(3年目)
担当:小島道生、下山直人(附属学校教育局)

<目的と背景>
本研究プロジェクトは、一昨年度から3か年計画にて立ち上げた。インクルーシブ教育 システムの構築が求められている今日、交流及び共同学習は非常に重要になる。附属学校教育局が中心となり、過去4年間、黒姫高原共同生活という新たな取り組みを進めてきたが、その一方、これまでに各附属学校では交流及び共同学習が実践されてきている。 令和2年度は、昨年度から継続して、交流及び共同学習の文献研究を進めた。また、本年度はコロナ禍における新たな取り組みとして実施されたオンラインでの交流及び共同学習に関する実践に対して、参加した生徒自身を対象として、その効果などについて検討した。その結果、生徒の評価から、オンラインの交流及び共同学習の成果と課題について一定程度明らかにすることができた。

プロジェクト研究2『演劇的表現やパフォーマンスを通した学習と学習環境の共創』 (3年目)
担当:茂呂雄二(附属学校教育局)

<目的と背景>
本研究プロジェクトは、現在、学習心理学及び発達心理学の領域で注目されているパフォーマンスアプローチに基づいて、①パフォーマンス・ベース・アプローチの整備、②附属における教育方法の革新/教員のマインドの改革/新しい危機管理研修方法の提案、③成果の出版と発信の3点を目指すものである。
本プロジェクトにおけるパフォーマンスの典型例は、俳優の活動や乳幼児の遊びである。現在の現実の自分を超えた在り方の演示を通して、自分の限界を突破する新しい行為と生の在り方を創造することがパフォーマンスである。普段行うことの無い行為を展開することで、固定化した生の在り方を見直して新しい行為を創造すること、並びにパフォーマンスを可能にする環境創造を集団で行うことが、発達に繋がる学習だとするパフォーマンス心理学に基づいて、このプロジェクトを進める。 令和2年度は、上記研究目的のうち①パフォーマンス・ベース・アプローチの整備について検討した。コロナ禍の状況でもあり、リモートでの研究会を開催するにとどまった。また、3年間の成果出版をめざして、出版社への相談を行った。
<会合の開催>
・ 8月8日 13:00~(オンライン開催) Fred Newman and  Lois  Holzmanの「Unscienfitic Psycology:A Cultural-Performatory Approach to Understanding Human Life」の研 究会
・ 10月25日 13:00~16:00(オンライン開催) Kontopodis(2012)「Neoliberalism,Pedagogy and Human Development」を読む会
・ 2月7日 16:00~18:00 (オンライン開催)

プロジェクト研究3『中高生のインターネット依存の現状と支援に関する研究』(2年目)
担当:原田隆之(附属学校教育局)

<目的と背景>
2017年の内閣府の「青少年のインターネット利用環境実態調査」によると、中学生の平均のインターネット使用時間は148.7分、高校生は213.8分に上っている。このようなインターネットの長時間使用を背景として、いわゆる「インターネット依存」に陥る中高生の増加が大きな社会問題になっている。厚生労働科学研究による全国の中高生約10万人を対象とした調査によると、インターネット依存が強く疑われる中高生は2012年には52万人であったものが(Mihara et al.2016)、2017年には93万人に上ると推計されている。
インターネット依存に陥ると、学校教育からの離脱や引きこもりのほか、様々な身体症状を来すなど、生徒の将来に深刻な問題が生じることが明らかとなっている。このため、早期に介入し、適切な治療・相談機関へ乗せてゆくことが必要である。しかし、依存している生徒をスムーズに支援に乗せてゆくことは難しい現状があり、問題が生じている生徒が早期のうちに支援を求めやすくする方法の開発が急務である。そこで、今回、インターネット依存のリスクが高い生徒がどれくらいいるのかを同定するとともに、危険の少ない生徒との比較調査を行い、インターネット依存のリスクが高い生徒の特徴を明らかにし、その支援をスムーズに行うための方法を明らかにする。
<調査対象>
・附属学校群の中学生・高校生、及びその保護者
<調査方法>
・保護者から調査に同意の得られた親子を対象として、調査票2通(保護者用・生徒用) を配布し、記入・厳封したものを1週間以内に回収する。
令和2年度は坂戸高校および桐が丘特別支援において調査を実施した。その結果、インターネットの1日平均使用時間が、両校の生徒とともに全国平均を超えていた。また、インターネット依存のスクリーニングの結果では、依存がうかがえる生徒の割合は、それぞれ19.4%、14.8%と決して低くない割合であることがわかった。

プロジェクト研究4『ICTを活用した授業実践の共有と公開~授業実践を持ち寄って、 筑波の附属から普段使いのICT活用法を発信しよう~』(2年目)
担当:雷坂浩之(附属学校教育局)、佐藤北斗(特別支援教育連携推進グループ、附属視覚特別支援学校)

<目的と背景>
各附属学校ではICTを活用した先進的な教育実践を行っている。しかしながら、附属間でお互いの実践を知る機会が少なく、成果の共有は進んでいない。
各附属学校での様々な実践は、これまで他のプロジェクト研究などを見ても、普通附属の先進的な実践が特別支援教育における指導の参考となったり、附属特別支援学校における個に応じたICTを活用した教育実践が普通附属での活用の参考となったりするなど、お互いに共有することはとても意味があると考えられている。 そこで本プロジェクトでは、互いの実践を共有するだけでなく、それぞれの専門性を活かして検討を加え、改善を進める。そして、共有した授業実践をもとにワークショップなどのイベントを行い外部に発信するとともに、広く成果交流を図り更なる実践を深めていく。
<活動内容>
・ICTを活用した教育実践の共有(附属各校で実践されているICT活用授業の検討及 びブラッシュアップ、など) ・ワークショップなどによる外部発信(各教育実践の紹介及び討議、など)
それぞれの附属学校が地理的に離れているため、頻繁に集まって事例検討を行うことが難しいため、Skypeをはじめ様々なツールを利用して、少しでも参加しやすいような環境を作りたい。また、このような取り組みを通じて、各ツールの遠隔教育への利用の検討にも活かすことを考えている。
令和2年度はCOVID-19の影響により対面での指導が難しい状況下において、各附属学校のオンラインでの実践を共有した。附属坂戸ではMicrosoft Teams、附属高校ではGoogle Classroomを活用し、休校期間中すぐにオンラインに切り替え、継続的な学びを進めていることが報告された。附属桐が丘からはZoomを活用した授業の実際の様子が共有され、また北海道新篠津からは、生徒に1人1台渡しているiPadと学内ネットワークをつなげての授業支援の取り組み、附属大塚からは集会や行事において密を避けるためにZoomを使い、各学年の教室をつなげたインタラクティブな活動を行っていることが発表された。また、附属視覚からは障害生徒へのオンライン指導の課題についても検証の必要があることが示唆された。各学校の発表からICTを活用した授業実践の質の向上について追究できた。
・プロジェクト研究_2020年度実績