教育長のひとこと NO.3

梅雨らしい日があるかと思えば、初夏のおとずれを感じる日が続くこのごろです。
雨にうたれた紫陽花に注ぐ光に、力強さを感じます。
今月は「ディズニーランドと学校(大学も含む)」について考えてみます。ディズニーランドは、サービス業の代表とも言えます。学校教育は専門職による「ヒューマン・サービス」ととらえることができます。ここでサービスの送り手(従業員、教職員)と受け手(客、児童生徒・学生)の関係に光をあてて、学校とディズニーランドの共通点と違いについて述べます。
まず「安全な場所の提供」や「集団ルール(例:順番を待つ)の尊重」など、共通点は多くあります。2011年3月11日の東日本大震災のとき、ディズニーランドにいた客が安全に避難できたことは有名な話です。そして学校の安全は、学校教育における重要な課題です。自然災害だけでなく、暴力・いじめ、体罰も、学校の安全を脅かすものです。
また「サービスの送り手の努力」が必要なことも双方に言えます。ディズニーランドの従業員も、学校の教職員も、サービスの向上に努力しています。サービスの進め方の工夫も、授業研究も重要です。
ではどこが違うのでしょうか。第一に「サービスの受け手の努力」です。ディズニーランドでは、客が楽しむためにがんばる必要はありません。客は「ディズニー夏祭り」などいろいろなしかけで、楽しませてもらえます。一方生徒が学校生活からどれだけの実りを得られるかは、生徒の努力に負うところが大きいのです。学校の教職員の仕事は、生徒の代わりに勉強することではありません。学校の役割は生徒が努力しやすい環境を作ることであり、生徒のがんばりが成長につながるよう支援することです。
第二の違いは、「サービスの送り手と受け手の関係性」です。もちろん、ディズニーランドでも、学校でも、サービスの送り手と受け手は、人間として尊重し合う対等の関係であることは共通しています。しかし同時にディズニーランドでは、サービスの送り手(従業員)よりも、代金を払うサービスの受け手(客)が上に立つと言えます。一方学校では、サービスの送り手(教職員)は教科や生活について指導する役割をもち、受け手(児童生徒・学生)よりも上にたつ側面をもちます。学校教育では、「対等な横の関係」と「良質な縦の関係」の両面が必要なのです。ここが教職員にとっての課題です。筑波大学の人材養成マインドである「師魂理才」(永田恭介学長の所信表明より)は、生徒を大切にし、生徒をリードする姿勢を強調しています。つまり横の関係と縦の関係の双方の必要性を示しているのです。
第三の違いは、「時間的な価値」にあります。ディズニーランドでは「今が楽しい」ことに価値があるのです。今の楽しみが1年間続くのであれば、1年に1回ディズニーランドに行けばいいことになり、年間パスポートは売れなくなります。一方学校では「今の充実と未来への成長」に価値があるのです。今生徒にとって学校生活は少し大変ではありますが、学校では将来役に立つことを獲得できるのです。教育は未来(Future)志向なのです。
学校はよりよい「サービス」をめざしてディズニーランドから学びつつ、生徒と大人がともに生徒と社会の未来を思いながら(Imagine the Future)、「教育サービス」の向上につとめたいですね。