10月のひとこと

筑波大学には11校もの附属学校があることは良く知られていると思いますが、一方で、筑波大学教職員ですら、そのユニークさを普段にはあまり意識していないようにも感じられます。筑波大附属11校とは、普通附属6校(附属小・中・高校、附属駒場中・高校、附属坂戸高校)と特別支援5校(附属視覚、附属聴覚、附属大塚、附属桐が丘および附属久里浜)であり、常に日本の先導的教育拠点として教育研究活動に取組んでいます。しかも、学校によっては、130年以上に及ぶ長い伝統があります。各学校の具体的な特徴については、ホームページ、2010年5月から約1年間37回に亘り連載した『筑波大附属の実践:特色あふれる授業の現場』(内外教育、時事通信社、2011)、『日本の教育を拓く:筑波大学附属学校の魅力』(晶文社、2007)などの本を是非ご覧頂きたいのですが、このコラムの当面の試みとして、附属小学校から順に、各学校を紹介していくことにします。

附属小学校では、第1学年から第6学年まで、1学年4学級で全24学級があり、全校児童960人、教職員40人が共に学び合っています。毎年、1学年の160名の定員に対して、入学希望者が4千名を超える伝統校です。明治6年(1873年)旧昌平黌あとに、師範学校練習小学校として設立後、明治35年(1902年)に東京高等師範学校附属小学校、昭和24年(1949年)東京教育大学附属小学校とその名称が変わり、昭和53年(1978年)筑波大学附属小学校となり現在に至ります。実に、今年で138年の歴史を誇ります。附属小学校の卒業生には、明治より、各界で活躍する数多くの人々が輩出されており、例えば、幸田露伴、鳩山一郎、藤田嗣治、岸田劉生、宮澤喜一、芥川也寸志、森 亘、石 弘光、野村萬斎などはとくに著名です。

附属小学校の大きな特徴として、小学校でも教科担任制であり、1904年の創刊号以来、1200号を超える月刊誌『教育研究』を全国の教員を対象に発刊し、毎年、6月と2月に学習公開や研究発表会が行われ、全国から数千人が訪れる教育拠点校であることを挙げることが出来ます。最近では、知識の伝達ではなく、“独創の教育”(自分らしく、知恵やものを新しく生み出したり、すでにあるものに新たな価値を付け加えたりする能力や態度)に取組んでおり、初等教育の授業にかかわる目的、方法、評価の実践的研究を行ない、初等教育モデルの創造に教職員一丸となって邁進しています。勿論、教科教育だけでなく、ヒドゥンカリキュラムとしての校内緒行事や宿泊・野外学習などを通した全人教育を行っています。また、活発な国際交流や3年前に始まった「教員免許状更新講習」にも大きく貢献し、本校の教員が、日頃の現場での教育実践と研究成果を基にして、附属学校実践実習として“初等教育の授業と理論を学ぶ”を講習テーマとした講座を担当しています。

以上、附属小学校は、日本の先導的な教育拠点として、筑波大附属としての気概を持って、日本の初等教育を発展させています。こうしてこのコラムを書いている私の部屋の窓から、10月1日のための運動会の予行練習でしょうか、児童達の元気な声が校庭に響いています。学校における学びを通して、次世代を担う子供たちが大きく成長することを精一杯に支援するのが学校であると痛感する今日この頃です。