11月のひとこと
2011年11月1日
先月のこのコラムの冒頭に、筑波大学には11校もの附属学校があることを述べました。今月は、附属小学校に続いて、附属坂戸高等学校を紹介したいと思います。坂戸高等学校は、1994年に全国初の総合学科として再出発し、生徒が自ら時間割を作る総合学科のパイロット・モデル校です。校舎は、池袋駅から東武東上線急行で約40分、埼玉県坂戸市の若葉駅から徒歩8分の豊かな自然にかこまれた附属の中でも広い敷地にあります。1946年に、1町5ヶ村の組合立坂戸実務学校・坂戸実修女学校として設立され、その後、組合立坂戸高等学校、東京教育大学附属坂戸高等学校を経て、1978年に、筑波大学附属坂戸高等学校と改称され、現在に至っています。
さて、私が、この4月に坂戸高等学校を訪問した時、大変に嬉しいことがありました。それは、廊下を歩いていると、すれ違う全ての生徒が大きな声で“こんにちは”と挨拶をするのです。聞けば、誰に言われたわけでもなく、伝統的にそのように上級生から下級生へと伝えられているようです。こんな雰囲気の学校には、久しぶりに出会ったような気がして、何だかとても嬉しくなりました。そして、2回目の訪問は、1年生の「産業社会と人間」という授業科目を担当させてもらった時です。この科目は、色々な社会で活躍する人々を講師として、生徒に将来の職業選択を強く意識し、考えて貰うことを基本としています。この科目は、1年生の時に、2・3年で履修する科目と系列を選び、自分だけの“時間割作り”のために役立てるのです。私は、この科目で、大学教員としての私のこれまでの自分史を話しました。どうしてこの職に就いたのか、研究と教育に携わることの面白さと責任など、とにかく60年を60分に短縮した話を致しました。講義が終わり、質問を受け、事後に感想文が手元に届きました。その内容を見て、私の話を良く聞いてもらったことが分かり、素直な質問や嬉しくなる感想がたくさん書いてあり、日本の将来を担う次世代の生徒たちに、素直に希望を抱かせるものでした。この学校の生徒たちは、極めて自由な発想を持ち、将来の自分の進みたい進路・職業を早い段階で考えながら、高校生活を過ごしているのが良く理解できました。
附属坂戸高等学校では、筑波大学との交流事業や、他の附属学校(特に特別支援学校)との連携交流事業も盛んに行われ、特筆すべきと思うのが、最近、とくに活発化しているのが生徒の国際交流事業です。学校自らが、外部資金を獲得していることにも注目すべきです。海外から多くの来訪者があり、逆に生徒たちが積極的に海外に出かけます。最近、インドネシアのコルニタ高校と環境・エネルギー・廃棄物などについて、学校全体で交流が始まりした。また、色々な部活動を通して、インターハイや国体などでも活躍する生徒、かるた部や演劇部など、実に多才な活躍があります。地域への貢献活動、とくに介護ボランティアやダンス・パフォーマンス等は、福祉活動にも大きく貢献しています。以上、附属坂戸高等学校は、総合学科のメリットを教育に十分に活かしながら、日本の中等教育を発展させていることを理解して頂いたと思います。