教育長あいさつ
今ひとつ、ヴィゴツキーにはユニークな主張があります。それは遊びや演劇の重要視です。ヴィゴツキーには10代の頃から演劇の評論で注目されたという早熟の事実があるのですが、子どもの発達を考える上で遊び=演じることの重要性を訴えました。簡略に言えば、例えば何かの知識やスキルを修得する時にも、お勉強モードで暗記するよりも、誰かの振りや物真似をして(科学者の振りをする、教えられるかわりに教える教員の真似をするなど)活動を再演することが重要だという主張です。この部分は、日本でも海外でも十分に咀嚼されておらず、大いに利用価値があり、今後の可能性を秘めた命題だと言えます。
このような研究をしてきましたので,附属学校群の教育実践や共同研究に関われることは大きな楽しみでもあり、自分自身の研究テーマを深める上でもありがたい機会と捉えています。
さて、筑波大学附属学校群は、その長い伝統の中で、日本の学校教育における発達支援と学習支援実践の研究において、大きな役割を果たしてきました。この伝統を引き継ぎ守るためには、ただこれまでのやり方を維持、継承するだけでは足りません。新しい教育実践にチャレンジすることが必要だと考えます。
伝統と創造の関係もいろいろに議論されていますが、伝統とはただ単に先人のやってきたことを継承し反復するだけではすまないことが広く指摘されています。焼き物の伝統を例にとれば、代を重ねることはただその窯に受け継がれた技能を再生産するだけでなく、当代が先代を超えるべく工夫と創造をこらすことではじめて、伝統の継承も可能になるのです。
先に触れたヴィゴツキーの遊びと演劇の考え方では、発達とは新しいパフォーマンスにチャレンジすることだと言われます。今のままの自分の姿を超えて、リスクをとって新しいことにチャレンジすることが発達なのです。そのためには、新しいチャレンジが出来る環境をメンバーで創造することも忘れてはなりません。発達のためのチャレンジ環境を創造することが学習なのです。
筑波大学附属学校群が、このようなチャレンジ環境を全学校の教職員が一丸となって創造することで、これまでの長い伝統が継承されていくといえます。